矛盾

東京三菱銀行UFJ銀行の合併延期が取りざたされている.
システム面での統合準備の遅れを原因とした金融庁の要請があるらしい.

ところで,この件に関してこんな記事をみつけた

金融庁三菱東京に強権、IT理由に統合延期の8月4日決定を迫る
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/biz/388661nikkeibp.jp

記事では、合併の準備は遅れを取り戻して着々と進んでいるのに、金融庁が難癖つけて合併を遅らせようとしている.というもの.

まず個人的には,金融庁の姿勢は支持している.
僕もどっかの雑誌で読んだ知識でしかないんだけれど,少なくとも以前(6月ぐらいの記事だっただろうか..),店舗番号の変更に係るテストを実施したとき,UFJ側は全店舗(or沢山の店舗?)に実施してエラー無し.一方,東京三菱側は,サンプルで数店舗のみ実施して,エラー多発.この件について金融庁が問いただしても,東京三菱はこれで十分だから,大丈夫だからの一点張りだったなんてのを見た.

こんなような経緯があったのなら,東京三菱が大丈夫だといったからといって,金融庁だってはいそうですかとはいかない.というより,なんと言っていようと,大丈夫かいなという視点からみることが必要になるのは当然だからね.
だから,東京三菱もしくはUFJから十分に納得のいく説明が無い限りは,延期してしっかり見てよという話もナットク.

一方,上の記事で東京三菱サイドの統合は大丈夫!との主張が論拠.サポートするものとしては,日銀考査で「テストは綿密に実施されている。10月1日のシステム統合を見直す材料は見当たらない」というのがあげられているけれど,そもそも金融庁検査と日銀考査の見る視点や体制の違いについて全く説明がないまま,こんなのもあるなんていわれても,今ひとつ弱い(記者が書くべきコトを書いていない)

なんだか,東京三菱のちょうちんじゃなかろかって気分になりつつ,最後をみると,この記事を書いたのは,「金融庁問題取材班」
なーんだ,はじめっから金融庁に問題があるって先入観もってかいたんじゃないの?なんて思わせるお粗末なモノでした.

郵政民営化に関するメモ

  • 「民にできることは民へ」の原則

この原則は堅持してほしい。もちろん、「民にできる」というのは民間において継続的にサービスが提供されることという意味合いである必要がある。
ここで、郵政公社の3つの業務、「郵便」「金融」「保険」を見てみる。まず概観としてどのサービスも民間企業により永らく行われている。直感的には、民間企業でも継続的にサービスを提供することが可能な事業であると考えられる。

  • 全国サービスの問題

郵政民営化への反対の論点として、全国サービスの維持が掲げられている。民間企業になると、儲からない事業については切り捨てられるから、過疎地域にサービスが行き届かなくなる。だから、郵政民営化はいけないのだと。
そもそも、宅配もなく、金融機関や保険の外回りもこない地域がどのくらいあるのか。
また、過疎地域が問題であるのであれば、他にも解決する手段は幾つかあるが、それらの方法による採算と、郵政全体を温存する採算の比較はどうなのかの議論は..
<過疎地域に対する解決策例>
民間企業が拠点を持たない地域に限り、国が資本を提供する法人を設立し、近場の民間拠点までの橋渡しを行う。あるいは、一定の補助を出して、民間事業者に事業所を立ち上げさせる(この場合、5年後との入札等により既得権益化を防ぐことが望まれる)。

  • 公務員に限定されている業務

裁判所からの文書など、配達人が公務員であることが定められている業務があるらしい。だから公務員としての地位を保ってやらなければならないのだという説がある。この話は、資格のようなものを創設するということになり聞かなくはなったが...
これは詭弁の類。なにがなんでも民営化はだめだという心意気がよく現れていて..もうなんというか..
通信の秘密と、確実な配達が確保されることが目的だろうから、それこそ代替案はいくらでも見つかるというものなのに(資格の設立とかね)、それをまぁ鬼の首をとったように騒ぎ立てる政治の恥ずかしいことといったら..

  • 運用の問題

今、郵便貯金で集められた金はどのように使われているか。
ほとんどが、国債やら財政投融資やらと国が借り上げている。すなわち、郵便局の集めた金は国の借金と同義。でもって郵政サイドは確実な運用利回り。借りる側も貸す側もなぁなぁ。良いわけがない。

  • なぜ今

もっと大事な問題があるのに、今郵政問題を語らなくてもいいじゃないかという反論をよく耳にする。最近では、街角インタビューなんかでもたまに見かける。
たぶん、今じゃなくてもいいっていう主張が、郵政反対派の主張のなかで最も成功した主張だろう。
しかし、郵政の問題はもっと前から、すぐにでも取り掛かるべき問題であったと思うのだ。理由はここまでで書いてきた通り。

  • 半端な改革はいらない

これも、郵政民営化反対派(主に野党)から聞こえてくる反対論。
これまで、何がしかの改革で最初からすばらしい出来になったものがあるのか。
国鉄電電公社道路公団..最初からこれでOKなどというものを政治に期待などできようはずも無い。とにかく前へ一歩すすんでもらわないとこには、ずるずると引き戻されるのだ。ただ反対するためだけの主張を唱える奴の名を心に刻んで、その主張はスルーしたいものだ。

  • 政治的な理由

これは僕の感覚でしかないのだけれど、政治家って「清濁併せ呑む」ことを政治と考えているって人が多いような感じ。「清濁併せ呑む」というと、本人は苦渋の末の判断というふうにかっこよく聞こえるけれど、見ていると実態はただの「なぁなぁ」。なんだかんだといいつつ、自分のお膝元への利益配分って人が多いんじゃないかと。そして、なにより困るのが、それが日本のためだと本人が本気で思い込んじゃっている人が多いんじゃないかと..

とまぁ書きなぐりですが、メモという位置付けにつき勘弁のほどを..

備忘(あとでちゃんと書くかも)

まだ続く監査法人の話.

企業から金をもらって,その企業を監査するっていうのだから,甘くなるよそりゃ
って話がたまにTVで出てくるけれど,そこが,そういう面もあると感じつつ,うーん,どうだろうと感じたりもする.

監査の位置づけって,一義的にはどのようなものか?

企業が,自らの正しさを示すための根拠として,第三者監査法人)により証明してもらう.=ISOなんちゃらと同じような位置づけ

株式公開企業においては,不特定多数が投資家であり,その予備軍.
その両者を適切に結びつけるための情報の正確性の担保

両方といえいば両方なのだろうけれど.

企業の財布からではなければ,どこが監査の金をだすのか?
株主?→不特定多数.とりまとめの代表者を置く?実質的におけるか?機能できるか?ムリだろう
税金?→公の過剰介入との印象をうける


今の段階の印象
企業は自らの正しさを示すための手段として,第三者にその証明を依頼
自らの正しさを自ら第三者に頼んで証明してもらう-自由主義経済ならとは思うけれど・・

監査法人について

昨日のハナシに出てきた監査法人についてもう少し.

仕事について

監査法人は,企業の決算が正しいことを証明するのが本業.
なお,決算が正しいことを証明するためには「公認会計士」という資格が必要.
なので,監査法人としての仕事をする人のほとんどは会計士です(もちろん,監査法人内部の事務職は違います).しかし,一部の専門業務や監査ではない業務は会計士ではない人が行っていたりもします.

ここで,決算が正しいことを証明するためには,企業のお金の流れに関するあらゆる資料を見ることができる立場であることが必要になります.
決算が正しいことを確認するために,すべての情報をみる訳ではありません(実質的に不可能です)なので,企業の決済にかかるプロセスや,企業自身の自己チェックのプロセス(内部統制)を確認したり,一部のお金の流れについては実際に支払いについての領収書や,買ったものがホントにあるか在庫の確認を行っています.

そして,企業の何から何までを見てしまう立場にあるので,法で規制されているものも非常に多いですが,それでもイロイロな派生業務が可能となります.その辺は広がりすぎるので,監査法人のホームページを参照してください.

形態について

普通の会社(有限会社,株式会社)は,有限責任といって,会社が潰れた場合でも,会社を作るために出したお金以上に金を払わされることはありません.
例えば,1億円出して作った会社が5年後,資産10億,負債100億で倒産したとしても,失うものは出資した1億円のみです(もちろん負債に対して債務保証していれば出資とは別にしっかり取られますが).別途10億円の個人的な預金があったとしても,それを払う義務はないのです.

一方監査法人監査法人はまず資本と経営が一体,すなわち,出資者は全員その監査法人で働いている人です(※監査法人で働く人全員が出資者ではありません).
そして,監査法人に出資している人は,もしその監査法人が潰れた場合は身銭を切ってでもその監査法人の借金を払わなければなりません.
つまり,1億円出資して作った監査法人が,資産10億,負債100億で潰れた場合,資産で返しきれない90億円は,出資した人が払わなければなりません.

監査法人で出資者になれるひとは,もちろんその内部で偉い人なわけですが,結構な数がいます.監査法人では出資者だけを「社員」と呼びますが,例えば,中央青山監査法人の場合,全員で3,679名のうち,社員 446名,さらにそのうち代表社員が269名となっています.(もしものときに自分の金まで持っていかれる(無限責任)を追うのは代表社員だけだったかも・・ちょっと記憶があやしくてごめんなさい)

普通の会社以上に,監査法人は自らの訴訟リスクに対して敏感であり,保守的な判断をする(せざるを得ない)ことになるのでしょう.

業界地図

監査法人には今,世界的に4つの大きいグループがあります.そして,各国の大きな監査法人はそのいずれかのグループの一員となっています.
少し前まで日本大きい監査法人が4つあり,世界的なグループは5つあったので,日本の監査法人のうち一つは,二つのグループに属するという,ちょっと変則的な状態だったのですが,エンロンの破綻により世界的なグループだったアンダーセンが消滅したため,ちょっとした業界再編の後に,1社1グループという素直な関係になっています.
日本の4大監査法人と,世界的グループの対応は次の通りです.(50音順)

 あずさ監査法人 (KPMG)
 新日本監査法人 (ERNST & YOUNG)
 中央青山監査法人 (PRICE WATERHOUSE COOPERS)
 監査法人トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu)

ちなみに,4社とも規模やら売上やらは大して変わりません.どんぐりの背比べ.
やっていることも当然大差なし.

ダイエー問題

今日の日経に,ダイエー問題の顛末の特集が組まれていました.
こういう実録ドキュメンタリーみたいのって好きです.

最後の決定打は,銀行の譲歩無き態度と,銀行の支援が打ち切られるのであれば,監査法人トーマツ)が中間決算を承認しないということ,そして通産省の後ろ盾を失ったことだったのでしょう.

銀行の譲歩ナシについては前回書いたので,残りの監査法人と行政・政治について.

監査法人による影響

上場企業は,決算を公表するに当たって,この「これらの財務諸表にはウソがありませんよ」ということを監査法人から承認をしてもらわなければなりません.

誰だって,自分で儲けたーって言っているだけの人を信じて金を預けたりはしません.それがホントなのか,銀行の残高をみたり,領収書をチェックしたりして,本人の言う儲けがホントかどうかを確かめる必要があるのです.

基本的に,監査法人の役目は決算が正しいことを証明するって事なのですが,ここ数年,エンロンワールドコムに端を発して,監査法人,もっとしっかりみなきゃイカンヨーという風潮があります.その流れのなかで一つでてきたのが,

『その企業が1年以内に潰れると思ったら,決算書に書かなきゃいけないよ』

ということ.もちろん,企業が自らウチはあと1年でダメかもしれない・・なんて書くわけないから,監査法人から「書かなきゃ認めないよ」って書かせることになります.
決算承認から1年以内に会社が潰れたら,場合によっては監査法人も訴えられて責任を取る(金を払う)ハメになりかねません.

だから,ダイエーについても,銀行の支援が怪しいのであれば,潰れる可能性を検討しなきゃいけない.でも,今の決算書はそんな検討していない→承認できません.と.
それにしても,最近監査法人がニュースに出てくることが増えてきたなぁ.

行政・政治について

通産省ダイエーの再生機構行きに頑なに反対していたとのこと.
だから,一部の政治家から「民にできることは民に」なんて発言があったと思われます.
しかし,再生機構の活用について「民にできることは民に」ということは,その言葉の意味を理解していないどころか,その発言自体がその言葉の逆を行くものだと感じます.

再生機構の活用の判断は,一義的には企業自身が行います.そして今回の件ではそれを銀行団が強く望んでいたという状況です.つまり,再生機構を活用するか否かは「官」の関与するものではないのです.そこで,再生機構を使うと判断するも,どっかから金集めてきて再建するも,それは与えられた状況下での選択.そこでの「民に〜」発言は,「君たちは再生機構を使うんじゃない」という意味にしかなりえず,それは民における経済活動への介入でしかないのです.

通産省ダイエーの再生機構行きへの反対については言わずもがな.
通産官僚が個人的にどう思うかは自由ですけど・・監督官庁として個別企業であってもその影響の大きさから個別の判断をする必要がある局面があるとしても・・その一方的な視点しか持ち合わせていないかのような行動はいただけないです.

ダイエーの行く先 

昨日,ダイエーの行動の理由がよく分からないとかいたけれど,朝,日経に奥田経団連会長のこの問題についてのコメントが載っていた.
「借りた金は耳をそろえて返すのがあたりまえ.貸し手責任より借り手責任」
なるほど.
ダイエーはすでに2度債権放棄をしてもらっていたと思うんだけど,すっかり,失敗の責任が自分にあることを忘れて,泣きつけばなんとかなると思っていて,だから,投資ファンドや再生機構のプランを全部並べてから選べばいいやなんて悠長なこと考えていたんだろうな.
まぁ,一種の開き直り状態にあったというか,開き直ればなんとかなると信じていたというか.

昨日までは,再生機構による資産査定はやっておいて.でも,とりあえず支援いるかどうかは後で決めるよ.コッチでもスポンサー探すから.なんてナメたこと言ってたものね.

ところが,今回は銀行も本気だった.いよいよわがままは通じない.ってことで,再生機構行きを呑んだということなんだろうなぁというのが,僕の頭の中でのストーリー.

ただ,銀行にしても,収益力が回復してきて大型案件も処理が必要なものは順次処理を進めている流れのなかで,さらに,株主からの監視も強まっている中で,いつまでもダラダラと債権放棄に応じるわけないっていうのは至極当然だと思うのだけれど,ダイエーはこの辺どう考えていたんだろうか?

あとは,この巨大小売チェーンをどう再生させるのか.資産査定結果や,その後のプランに注目です.

<おまけ>
日経に,ダイエーは小売業の日銭商売だから,銀行の支援がなくなっても当面は大丈夫なんて書いてあったけれど,それは違うんじゃないかと思う.
多分,仕入先が確保できないから.日銭商売も,商品があってこそ.でも,危ないとなれば巨大チェーンの店頭を埋め尽くすだけの商品を仕入れることは到底ムリでしょ.

ダイエーはどこを向いているのか

ダイエーが,ここまで頑なに銀行の勧める産業再生機構による再建を断って,独自に見つけたスポンサーによる再建にこだわるっていうのはちょっと意外だった.
いくら日銭商売とはいえ,ダイエーの財務体質は銀行による支援が打ち切られれば,即アウトになりかねない状態.そこで銀行を敵に回してまで産業再生機構なしの再建にこだわる理由はなんなのだろう?
可能性のあるものを列記してみる.

1.産業再生機構行き=破綻企業 というレッテルは背負いたくない
 →ここ10年,長崎屋やマイカル等,破綻した小売業は多いだけに,破綻企業である
  というイメージが消費者に与える悪いイメージはだいぶうすまっているのでは?
  仕入先について,再生機構にいくと不利になるような理由は思いつかない.

2.複合企業体へのこだわり(ホークス,総合スーパー形態)
 →再生機構の案では,ダイエーは食品専門スーパーへの業態変更となっている
  けれど,これが嫌だっていうのはありそう.
  浜松町のダイエーの本社(登記上の本社じゃないかも)を見たことがあるけれど,
  壁のようにそびえたつ迫力あるビル.ビルから判断するワケじゃないけれど,
  どんどん拡大していただけに,俺たちはでかいことができるって意識が
  あるのかなぁ.

3.経営陣の保身
 →再生機構に行かずとも,クビを切られる可能性は十分にあると思うのだけど..
  経営陣そのまんまって条件でカネを出すようなところはあるまい.
  それとも,ワンチャンスあればなにかできるって思っているのかなぁ

4.設立者の威光
 →まだあるのかしらん?

とりあえず思いつくままに書いてみたけれど..全然ワカラン.当たっていないような気がするケド...

とりあえず,顧客,株主,債権者(含銀行),従業員,仕入先,経営者,設立者,出資予定者,再生機構ナドナド,利害関係者はまだまだあるけれど,どこを向いているのかがよく分からないんだよなぁ.

ついでの余計なお世話ながら・・
カルフールも撤退を検討,ウォルマートと提携している西友も苦戦しているなか,ダイエーが標榜した欧米型のSCは難しいのではないだろうかと思います.
ダイエーとヨーカドーの両方に行くと感じるのだけれど,ダイエーって小奇麗感が劣るんだよね.ヨーカドーやジャスコに比べて,ちょっと薄暗い感じがするというか.
再度,ダイエースタイルで再建といても,・・・どうなんだろ?と感じます.