りそな銀行の店舗外ATM戦略と吉野家

りそな銀行、吉野家と店舗企画業務で提携(NIKKEI Press Release)

プレスリリースを読むと,吉野家りそな銀行のATMを置くということではなく,りそなのATMをどこにおいたらいいのかを吉野家に教えてもらうということらしい.
おそらく吉野家の平均客単価は1,000円を超えないし,一人や二人の客が多いなかで,お金を下ろすことに対する需要はほとんど無いだろう.

しかし,吉野家にATMを設置するのではないとすると,なぜこのような提携が生まれたのかが気になります.

りそなサイドから見ると,とりあえずあちこちに店舗外ATMを作ってみたものの,結構設置場所の選定に失敗したらしく(プレスリリースからの印象),その見直しを行いたいと考えていたということなのでしょう.

一方,吉野家サイドですが,吉野家はいわずと知れた牛丼最大手.街の至るところに店舗を出し続けています.すなわち,恒常的に不動産情報を集める体制を持っているものと思われます.しかし,米国産牛肉の輸入停止問題で売り上げはがた落ち.新規出店をする余裕などない状態にあるものと思われます.
そのなかで,手元に集まる不動産情報を有効に活用するためのビジネスを始めたということなのではないでしょうか.
ただし,吉野家にとって,そのサービスの提供先は本業と競合せず,かつ,独自の不動産選定体制を持たない(もしくは弱い)先と,なかなかに限定された先のみとなります.
その中で,銀行のATMの設置場所というのは,好都合な相手先であると考えられます.

ただし,コンビニATM等,すでに街中のいたるところにATMが設置されている状況下において,わざわざ自社のATM網を充実させていくりそな銀行の戦略については,判断の難しいところであるとは感じます.
また,牛丼屋を出店する場所と,ATMを設置する場所って全然違うんじゃないかという懸念もありますが,その辺についてはどのような検討を経たのかについても気になるところです.

追記
プレスリリースの中で,こんな一文があります.
金融工学に基づく当社独自の出店モデル新たな店舗外ATMの設置基準を構築」
金融工学って言葉自体,なんとなく胡散臭さを感じるのだけれど,まぁ一般には金融商品の運用や評価,管理にかかるテクニックを指すのかなぁと思っていましたが・・店舗設置にまで金融工学という言葉を臆面も無く使ってしまうなんて!斬新ではありますが,なんだかやるせないような,不安な気持ちで一杯になります^^;