交通事故に対する賠償請求訴訟からヤマダ電機の企業統治を考える

<ヤマダ電機社長>長女の事故死 7億円超の損害賠償請求Yahoo!

仮にこの女性が,ヤマダ電機の社長とは全く無関係の平凡なサラリーマンの家庭に生まれていた場合でも,26歳で東証一部上場企業の課長であり,そしてその時点で将来社長になることが100%間違いないということが証明されれば,サラリーマンの生涯賃金の平均は2億〜3億ぐらいだから,その女性の逸失利益が6億という計算もありえるのだろうけれど...果たしてそんな証明が可能なのだろうか?

仮に,その女性の能力ではなく(上記の証明がなされず),「ヤマダ電機の社長の娘」という属性をもって6億の逸失利益が認められるとすれば,それは生まれた家庭によって命の価値が違うことを裁判所が認定することを意味する気がしてしょうがない.(別の解釈の仕方があれば是非知りたい)

さて,ここでヤマダ電機の山田社長の行動を考えてみる.期待の愛娘を失った悲しみは僕の想像を遥かに越えるもので,信号無視を起こした相手に対する恨みもまた,僕の想像の及ばないものだろう.
しかし,ウチの娘は将来の社長だからそれだけの金を払えという訴訟は戴けない.
ヤマダ電機は,東証一部で株式を公開している企業であり,株主の50%は海外から.山田社長の持ち株比率は1.6%(他にも一族で抱えている株はあるのだろうけど).もはや,ヤマダ電機は山田さんちの持ち物ではないのだ.
社長は株主が決めるものなので、社長がウチの娘だから社長だ!というの原則的にはナシの世界です。そして,社長だから,創業者だから何でもできるということを表立って言って歩くような行動は,昨今の株主重視の経営の対極にあるものであり,社長や一部の役員による合理性に欠ける行動に対するチェックや抑止をする機能が全く整備されていない(機能していない)ことが推察されるのです.

そしてもう一つ.
シャープがイオンの自社ブランドの液晶テレビについて,液晶パネルの特許侵害を理由に販売差し止めを裁判所に求めた際,イオンは,シャープとの取引停止を打ち出しましたが,そのとき,イオンに対して多数の抗議が寄せられたということがありました.
これは,消費者の「企業の行動」に対する目が厳しくなっている,即ち,合理性に欠ける行動をとる企業から消費者が離れていくことを示しているのですが,この山田社長の行動は消費者の目にどうとまるか.気になるところです.

省庁の財務諸表

農水除く全省が「債務超過」・02年度の省庁別財務諸表(NIKKEI)

各省庁の財務諸表が財務省から発表されたらしい.
「らしい」というのは,財務省のホームページに行ってもその「財務諸表」が見つからないからだ.

財務諸表の何が公開されたのか,具体的な計算の定義を見てみたいのはもちろん,各省庁内でどのくらい分割された情報がでているのか,ちょっと見てみたかった.

日経の記事によると,農水省以外は債務超過であり,債務超過額が最も大きいのは総務省の113兆円,次いで厚生労働省の71兆円であったとのこと.そして,『税収不足のなかで赤字国債の膨張が各省の「財務状況」を圧迫しているわけで、財務省は一層の歳出削減を迫る構えだ。』ということらしい.

農業等の一次産業に対する補助金や優遇施策はものすごくぶ厚いのになぜ,農水省は資産超過なのかということ.一つの要因は,記事の中にあるとおり,国有林野が資産として計上されているためなのだろうけれど,ここでもう一つの可能性について書きとめておこう.それは,補助金等を予算計上して,それを農家等に支払う行為は,バランスシートに影響を与えていないのではないかということ.即ち,国庫から農家等へ補助金を流しても,それは損益計算書が膨らむだけで,補助金を無駄にばら撒いていたとしても,省庁の負債としては積みあがらないような計算なのではないかというところが気になっているのです.詳細な資料が公表されたときの要チェックポイント①ね.

もう一つ気になるのは,総務省債務超過幅の大きさ.どうせ郵便局がらみなんだろうなぁと思いつつ,あれ?郵政公社になって一応切り離されたのでは・・と思いなおし,やっぱり2002年度だから郵便局なんだろうなぁと思う次第.ホントかどうか,詳細が資料が公表されたときのチェックポイント②.

これらの数字も,歳出削減に用いていくということで,財務省は歳出の抑制にはいろいろと考えて実行に移しているんだなぁと感心.もっとも,金をもらうほうも必死だから,歳出の抑制も厳しい道のりなのだろけれど,ない袖は振れないし,借金(国債)は僕の身に降りかかってくる問題になっちゃうので,是非是非頑張ってほしい.

これに関連して,数字で評価するということについて書きたくなった,ということをメモがわりにここに書いておく^^;

りそな銀行の店舗外ATM戦略と吉野家

りそな銀行、吉野家と店舗企画業務で提携(NIKKEI Press Release)

プレスリリースを読むと,吉野家りそな銀行のATMを置くということではなく,りそなのATMをどこにおいたらいいのかを吉野家に教えてもらうということらしい.
おそらく吉野家の平均客単価は1,000円を超えないし,一人や二人の客が多いなかで,お金を下ろすことに対する需要はほとんど無いだろう.

しかし,吉野家にATMを設置するのではないとすると,なぜこのような提携が生まれたのかが気になります.

りそなサイドから見ると,とりあえずあちこちに店舗外ATMを作ってみたものの,結構設置場所の選定に失敗したらしく(プレスリリースからの印象),その見直しを行いたいと考えていたということなのでしょう.

一方,吉野家サイドですが,吉野家はいわずと知れた牛丼最大手.街の至るところに店舗を出し続けています.すなわち,恒常的に不動産情報を集める体制を持っているものと思われます.しかし,米国産牛肉の輸入停止問題で売り上げはがた落ち.新規出店をする余裕などない状態にあるものと思われます.
そのなかで,手元に集まる不動産情報を有効に活用するためのビジネスを始めたということなのではないでしょうか.
ただし,吉野家にとって,そのサービスの提供先は本業と競合せず,かつ,独自の不動産選定体制を持たない(もしくは弱い)先と,なかなかに限定された先のみとなります.
その中で,銀行のATMの設置場所というのは,好都合な相手先であると考えられます.

ただし,コンビニATM等,すでに街中のいたるところにATMが設置されている状況下において,わざわざ自社のATM網を充実させていくりそな銀行の戦略については,判断の難しいところであるとは感じます.
また,牛丼屋を出店する場所と,ATMを設置する場所って全然違うんじゃないかという懸念もありますが,その辺についてはどのような検討を経たのかについても気になるところです.

追記
プレスリリースの中で,こんな一文があります.
金融工学に基づく当社独自の出店モデル新たな店舗外ATMの設置基準を構築」
金融工学って言葉自体,なんとなく胡散臭さを感じるのだけれど,まぁ一般には金融商品の運用や評価,管理にかかるテクニックを指すのかなぁと思っていましたが・・店舗設置にまで金融工学という言葉を臆面も無く使ってしまうなんて!斬新ではありますが,なんだかやるせないような,不安な気持ちで一杯になります^^;