ダイエー問題

今日の日経に,ダイエー問題の顛末の特集が組まれていました.
こういう実録ドキュメンタリーみたいのって好きです.

最後の決定打は,銀行の譲歩無き態度と,銀行の支援が打ち切られるのであれば,監査法人トーマツ)が中間決算を承認しないということ,そして通産省の後ろ盾を失ったことだったのでしょう.

銀行の譲歩ナシについては前回書いたので,残りの監査法人と行政・政治について.

監査法人による影響

上場企業は,決算を公表するに当たって,この「これらの財務諸表にはウソがありませんよ」ということを監査法人から承認をしてもらわなければなりません.

誰だって,自分で儲けたーって言っているだけの人を信じて金を預けたりはしません.それがホントなのか,銀行の残高をみたり,領収書をチェックしたりして,本人の言う儲けがホントかどうかを確かめる必要があるのです.

基本的に,監査法人の役目は決算が正しいことを証明するって事なのですが,ここ数年,エンロンワールドコムに端を発して,監査法人,もっとしっかりみなきゃイカンヨーという風潮があります.その流れのなかで一つでてきたのが,

『その企業が1年以内に潰れると思ったら,決算書に書かなきゃいけないよ』

ということ.もちろん,企業が自らウチはあと1年でダメかもしれない・・なんて書くわけないから,監査法人から「書かなきゃ認めないよ」って書かせることになります.
決算承認から1年以内に会社が潰れたら,場合によっては監査法人も訴えられて責任を取る(金を払う)ハメになりかねません.

だから,ダイエーについても,銀行の支援が怪しいのであれば,潰れる可能性を検討しなきゃいけない.でも,今の決算書はそんな検討していない→承認できません.と.
それにしても,最近監査法人がニュースに出てくることが増えてきたなぁ.

行政・政治について

通産省ダイエーの再生機構行きに頑なに反対していたとのこと.
だから,一部の政治家から「民にできることは民に」なんて発言があったと思われます.
しかし,再生機構の活用について「民にできることは民に」ということは,その言葉の意味を理解していないどころか,その発言自体がその言葉の逆を行くものだと感じます.

再生機構の活用の判断は,一義的には企業自身が行います.そして今回の件ではそれを銀行団が強く望んでいたという状況です.つまり,再生機構を活用するか否かは「官」の関与するものではないのです.そこで,再生機構を使うと判断するも,どっかから金集めてきて再建するも,それは与えられた状況下での選択.そこでの「民に〜」発言は,「君たちは再生機構を使うんじゃない」という意味にしかなりえず,それは民における経済活動への介入でしかないのです.

通産省ダイエーの再生機構行きへの反対については言わずもがな.
通産官僚が個人的にどう思うかは自由ですけど・・監督官庁として個別企業であってもその影響の大きさから個別の判断をする必要がある局面があるとしても・・その一方的な視点しか持ち合わせていないかのような行動はいただけないです.