監査法人について

昨日のハナシに出てきた監査法人についてもう少し.

仕事について

監査法人は,企業の決算が正しいことを証明するのが本業.
なお,決算が正しいことを証明するためには「公認会計士」という資格が必要.
なので,監査法人としての仕事をする人のほとんどは会計士です(もちろん,監査法人内部の事務職は違います).しかし,一部の専門業務や監査ではない業務は会計士ではない人が行っていたりもします.

ここで,決算が正しいことを証明するためには,企業のお金の流れに関するあらゆる資料を見ることができる立場であることが必要になります.
決算が正しいことを確認するために,すべての情報をみる訳ではありません(実質的に不可能です)なので,企業の決済にかかるプロセスや,企業自身の自己チェックのプロセス(内部統制)を確認したり,一部のお金の流れについては実際に支払いについての領収書や,買ったものがホントにあるか在庫の確認を行っています.

そして,企業の何から何までを見てしまう立場にあるので,法で規制されているものも非常に多いですが,それでもイロイロな派生業務が可能となります.その辺は広がりすぎるので,監査法人のホームページを参照してください.

形態について

普通の会社(有限会社,株式会社)は,有限責任といって,会社が潰れた場合でも,会社を作るために出したお金以上に金を払わされることはありません.
例えば,1億円出して作った会社が5年後,資産10億,負債100億で倒産したとしても,失うものは出資した1億円のみです(もちろん負債に対して債務保証していれば出資とは別にしっかり取られますが).別途10億円の個人的な預金があったとしても,それを払う義務はないのです.

一方監査法人監査法人はまず資本と経営が一体,すなわち,出資者は全員その監査法人で働いている人です(※監査法人で働く人全員が出資者ではありません).
そして,監査法人に出資している人は,もしその監査法人が潰れた場合は身銭を切ってでもその監査法人の借金を払わなければなりません.
つまり,1億円出資して作った監査法人が,資産10億,負債100億で潰れた場合,資産で返しきれない90億円は,出資した人が払わなければなりません.

監査法人で出資者になれるひとは,もちろんその内部で偉い人なわけですが,結構な数がいます.監査法人では出資者だけを「社員」と呼びますが,例えば,中央青山監査法人の場合,全員で3,679名のうち,社員 446名,さらにそのうち代表社員が269名となっています.(もしものときに自分の金まで持っていかれる(無限責任)を追うのは代表社員だけだったかも・・ちょっと記憶があやしくてごめんなさい)

普通の会社以上に,監査法人は自らの訴訟リスクに対して敏感であり,保守的な判断をする(せざるを得ない)ことになるのでしょう.

業界地図

監査法人には今,世界的に4つの大きいグループがあります.そして,各国の大きな監査法人はそのいずれかのグループの一員となっています.
少し前まで日本大きい監査法人が4つあり,世界的なグループは5つあったので,日本の監査法人のうち一つは,二つのグループに属するという,ちょっと変則的な状態だったのですが,エンロンの破綻により世界的なグループだったアンダーセンが消滅したため,ちょっとした業界再編の後に,1社1グループという素直な関係になっています.
日本の4大監査法人と,世界的グループの対応は次の通りです.(50音順)

 あずさ監査法人 (KPMG)
 新日本監査法人 (ERNST & YOUNG)
 中央青山監査法人 (PRICE WATERHOUSE COOPERS)
 監査法人トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu)

ちなみに,4社とも規模やら売上やらは大して変わりません.どんぐりの背比べ.
やっていることも当然大差なし.